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『東京物語』

 言わずと知れた、小津安二郎。

 ストーリーはとても簡単なのに、何回見ても新鮮に観られる。観るたびに、小さなこだわりに驚く。
 ただ、老夫婦が田舎から東京の子どもたちに会いに行って帰ってくる。それだけ。
 デティールはイロイロあるが、一言で表せばそれだけ。

 それだけの物語、なのに。
 小さな小さな事柄に、ひとつひとつ意味づけをして、命を吹き込んでる。小津安二郎のキメ細かさ。
 ケチのつけどころが、まるでない。

 また、出る役者出る役者、全員いい。

 
 香川京子と原節子。スカートの丈が微妙に違う。
 また、香川京子は靴下はいて仕事に出る。
 原節子はストッキングで仕事している。
 ただ、田舎の女性とOLの違いだけではない。

 こんな小さな小道具・場面にまで妥協のない計算をしている。

 香川京子が裏路地を通るところで、遊んでた子供が丁寧にお辞儀をする。不自然。
 あそこまでの丁寧なお辞儀はない。ラストで明かされる。

 香川京子が、なぜ家族のことにあれほどこだわるのか。彼女の職業意識がそうさせてる。
 香川京子の純粋さを見つめる、原節子の目。あまりに深いまなざし。観ている者は、原節子のまなざしに何を読み取るか。


 親の成長と、子どもの成長。
 家制度の崩壊、家族の在り方を香川京子、原節子、杉村春子が見事に表現している。凄すぎる。
 アメリカ映画には無理。

 『七人の侍』のリメイクはあっても、『東京物語』のリメイクはない。ありえない。
 (あるのかもしれないが、誰も評価しない。)

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2011年09月20日 19:16に投稿されたエントリーのページです。

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