言わずと知れた、小津安二郎。
ストーリーはとても簡単なのに、何回見ても新鮮に観られる。観るたびに、小さなこだわりに驚く。
ただ、老夫婦が田舎から東京の子どもたちに会いに行って帰ってくる。それだけ。
デティールはイロイロあるが、一言で表せばそれだけ。
それだけの物語、なのに。
小さな小さな事柄に、ひとつひとつ意味づけをして、命を吹き込んでる。小津安二郎のキメ細かさ。
ケチのつけどころが、まるでない。
また、出る役者出る役者、全員いい。
香川京子と原節子。スカートの丈が微妙に違う。
また、香川京子は靴下はいて仕事に出る。
原節子はストッキングで仕事している。
ただ、田舎の女性とOLの違いだけではない。
こんな小さな小道具・場面にまで妥協のない計算をしている。
香川京子が裏路地を通るところで、遊んでた子供が丁寧にお辞儀をする。不自然。
あそこまでの丁寧なお辞儀はない。ラストで明かされる。
香川京子が、なぜ家族のことにあれほどこだわるのか。彼女の職業意識がそうさせてる。
香川京子の純粋さを見つめる、原節子の目。あまりに深いまなざし。観ている者は、原節子のまなざしに何を読み取るか。
親の成長と、子どもの成長。
家制度の崩壊、家族の在り方を香川京子、原節子、杉村春子が見事に表現している。凄すぎる。
アメリカ映画には無理。
『七人の侍』のリメイクはあっても、『東京物語』のリメイクはない。ありえない。
(あるのかもしれないが、誰も評価しない。)