こえびほど購買欲はないが、数年前から懐中時計が欲しかった。
公民館でよくあるが、『〇:〇〇までに終わって下さい。』と言われた時。高座から見える位置に時計がかけてあればいいが、ない時がある。
腕時計して上がるのは、あまりにも野暮。
腕時計を座布団の横に置ければいいが、残念ながら今使っているヤツは置けない。
30分までならほぼ間違いなく降りてこられるが、60分越すと、調子によって前後する。
数年前、平治師匠が懐中時計をそっと置いて噺を始めるのを見た。
その時の所作が実にカッコ良かった。しびれた。
それ以来、懐中時計が欲しくなった。
ところが、懐中時計なんて売ってない。
先日【いちろく屋】なる古着屋さんの社長に懐中時計を尋ねたら、・・・アッタ。
しかも渋い。一番いい奴は社長が「これ売り物じゃないから。」とあっさり断られた。
でも、2番いい奴と、3番いい奴を譲ってもらった。値段は言わない約束。
今度、時計の見えない公民館に行くのが楽しみ。
平治師匠の所作で、そっと懐中時計を出す。
誰かそれを見て、懐中時計が欲しくなれば、私の気持ちがわかる。
これも芸の伝承。