20年ぶりくらいに『もう半分』を演る。35年間の落語生活で演ったのは3回ほどしかない。
この噺をやると、会場がどんよりと沈み込む。決していい噺ではない。おちも付いていて、落語の型はもっているが、ユーモアやギャグは全くない。陰の噺。
不思議で、珍しい噺。
今回主催者の要望で、「怖い噺」ということ、久しぶりに掘り起こした。
志ん朝師匠も演っている。今回のために何回も見直した。
平治師匠もやる。
でも、ことこの噺に関しては、古今亭今輔師匠を越える噺家はいない。志ん朝師匠も平治師匠もまだ若い。枯れた志ん朝師匠を観たかった。
今輔師匠の『もう半分』。絶品。
で、『もう半分』だけで終わると、お客様が、いやーな気分でうつむいてお帰りになるので、最後は『皿屋敷』で終わる。
帰っていただくときには、ひと笑いしていただいて、さっぱりした気分で帰っていただく。
商店街寄席では『もう半分』演らない。この噺をトリに持ってこれないし、この噺の後出る者はいない。
あと20年後どこかで演るか。20年後は、もうこの世にいないか(笑)。ということは昨日の『もう半分』が勘朝最後の『もう半分』だった(のかもしれない)。