1週間に3回もの興業は大変だった(苦笑)。
自分でまいた種だから刈り入れまでちゃんとして。
で、今回自分の興業を、お客様にまぎれてたっぷり観た。
『お客さまにとって一番楽しめる寄席は何か』に触れたような気がする。
もちろん興行主にとって一番いいのは、たっぷり入ってもらうこと。
お客さまにとって一番いいのは、演者が発する『芸』を自分の『感性』でキャッチできるポイント。最高のチューニングポイントで観ること。
演者全身が観れて、小さな所作を逃さず、生の声が聴ける位置。
米朝師匠も『落語と私』で、
「落語はマイクを通すと声が音になります。」と書いている。
となると、もしかするとふくふくホールは広すぎるのかもしれない。
ユリックスの小部屋で聴いた両師匠の落語は実に贅沢だった。
鯉昇師匠が、ぼそぼそ語り始める声は心地よく。平治師匠の声は張りがあった。特に講談は聴きごたえ十分。
鯉昇師匠が【片手鉢巻をしくじる】所作で、【鉢巻】がハッキリ見えた。
流れて行く棹も、櫓も、岸壁に残されたこうもり傘も見えた。
平治師匠が扇子を変えたのもわかってたし、【肥甕】も湯気の上がる海苔を巻いたご飯も見えた。
二日目の、小さなお座敷で聴いたお客さま方は本当にラッキーだった。
興業主からすると『損』な落語会だが、お客様からすると実に『得』した贅沢な落語会だった。客でよかったぁ。と至福のひと時。